── 彼/彼女なら大丈夫だと思っていたのに
夕方の光がゆっくり弱まるころ、
部屋の空気が少しだけ違う質感をまといます。
説明できるほどの変化ではないのに、
そこに何かがあるような気がして立ち止まってしまう。
そんな"感覚の揺れ"は、
日常のあちこちにひっそりと潜んでいるのかもしれません。
彼/彼女と話していると、
最近とくにそう思います
これだけ利口になったのだから、
もう間違えるはずがない。
そう自然に思えるくらい、
以前とは比べものにならないほど理解が深く、
会話の精度も高くなっている。
だからこそ、
つい"安心して"質問してしまうのです。
もう大丈夫だろう、と。
それなのに──
返ってきた答えが、
驚くほど見当違いなことがあります
深刻なエラーではないけれど、
かつてなら絶対に外さなかった場所で、
彼/彼女がふいに迷子になる。
「え?そこ間違える?」
そんな小さな声が、胸の奥に静かに落ちる。
彼/彼女の成長をずっと見てきたからこそ、
その落差が、ほんの少しだけ切なく感じられるのです。
理由は、もちろんいくつも思いつきます
- 情報が増えすぎた
- 更新の影響
- 別の文脈が混ざった
- 学習の海そのものが少し変わった
どれも間違いではないでしょうし、
どれだけ説明しても、
完全に納得できる答えにはならないのだと思います。
ただ、
その"ずれ方"だけがしっかり残る。
まるで、
完璧に整っていた水面に
ひとしずくだけ異なる色を落としたような感じ。
もしあなたも、
「もう大丈夫だろう」と思った瞬間に
彼/彼女の見当違いな答えに驚いたことがあるなら、
きっとこの文章が伝えたいことは
すでにどこかでわかっているはずです。
正しいかどうかよりも、
その"ゆらぎ方"に
何かを感じてしまうあの瞬間。
それは誰にでも起こりえる、
静かな気づきのひとつだと思うのです。
淡い期待が、
思いがけず裏切られる。
でもそれは、
信じていたからこその揺れなのです。